1月22日8時0分配信 産経新聞
終身雇用が崩れ、個々人の仕事に対する価値観が多様化する中、自社が展開する商品を提供する喜びややりがいを社員が見失い、会社の求心力が失われるケースが増えている。そんな企業の悩みに正面から取り組み、「ビジョンマネジメント」という新たな手法で企業の社会的価値を高めているのが、組織と個人の変革に取り組むリンクアンドモチベーション(東京都中央区、小笹芳央社長)だ。平成14年ごろからコンサルティングの形で始めたが、ここ1年ほどで企業からの相談が急増。「ビジョンを社員と共有したい」という企業のニーズにこたえている。(菅野光章)
同社は、(1)企業の新人採用にあたっていかに応募者のモチベーション(動機付け)を高めるか(2)社員の自立意識を高め、企業の社会的意義をいかに浸透させるか(3)社内のコミュニケーションをどう活性化し、働く環境を整えるか-といった観点から、さまざまなコンサルティング業務を行っている。
ビジョンマネジメンドは、社員の働く意識を再構築するため、企業のビジョンを明確化し、社員に共感してもらう手法。管理職をはじめ、部門ごとの社員を全社集会のようなイメージで集め、会社の将来像などについて腰を据えて話し合うことで、社員の意識を変化させる。
ビジョンを浸透させるためには、社員の心を「アンフェーズ(解凍)」し、「チェンジ(変化)」させ、「リフレーズ(固める)」するという3段階を踏む。固定的な考え方や個人の疑問を解くため、「仕事の価値とは何か」「何を提供したいのか」を考えるきっかけを与え、ビジョンに基づき使命や価値観を提供、定着させる。同社モチベーションエンジニアリング事業部の水谷健彦部長は「社歴の浅い、若い社員ほどビジョンを吸収する素地がある」という。
あるパチンコ経営会社では、「心の安らげる店にするにはどうすればよいか」を従業員と幅広く話し合う過程で、徐々に従業員の意識が変化。顧客との接し方そのものが変わり、近所のお年寄りの女性が店員と談笑だけをしに来るような“安らぎの場”になった。また、顧客とのコミュニケーションの仕方が変わったことで、「さらにどうすべきか」「どうしたいか」を考える環境が醸成され、上司の評価に対する考え方も変わったという。
水谷氏は「終身雇用の時代は、物質的な豊かさを求め、働くことに疑問を持つことが少なかった。だが、今は仕事をする理由が必要になっている」と指摘。業務内容や将来性、やりがい、待遇など、社員の価値観も多様化する中、企業の戦略を効果的に発揮するためにもビジョンを浸透させることが重要という。
社員にビジョンが定着すれば、会社の戦略・施策の効果を最大限引き出すことが可能になるばかりか、優秀な人材の流出も防ぐこともできる。歴史や伝統があり、規模の大きい会社ほど変革には時間がかかるが、企業の社会的価値向上への着実な一歩になりそうだ。
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